皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
「橘さん、わざわざ指摘ありがとう」

 幸崎さんの穏やかな声に、橘さくらは満足そうに頷いた。

「いえ、至らない友人(・・)に指摘してあげるのは、同期として当然のことですから」
「ふぅん、で、俺に何か用なのかい?」
「ええ。先日のインタビュー記事について何点か確認をしに伺ったんです」 

 ビジネスライクな幸崎さんの口調に気付かず、とっておきの笑みを浮かべた橘さくらは手に持っていた書類を手渡す。

「わかった、後で確認しておくよ。ところで……」

 次の瞬間、幸崎さんの言葉に、オフィスにいる全員が息をのんだ。

「俺、別に迷惑じゃないからね」
「え……?」

 怪訝そうな顔をする橘さくらの前に、幸崎さんが一歩詰め寄る。

「佐倉さんのこと、迷惑じゃないって話だよ」
「そ、そうですか」
「っていうかね、俺、昨日佐倉さんに告白して、お付き合いすることになったんだ。だから今、超ラブラブな訳。業務中なのに、空気読めないカップルでごめんね」
 
 ぐるりと周囲を見渡して、幸崎さんが高らかに宣言すると一瞬の沈黙の後、フロアの中は一気に騒然となった。

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