皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
「近々同期会あるらしいけど、今回はどうする?」

 同期会。その言葉に、また橘さくらの顔が浮かぶ。私は苦笑いで答えた。

「うーん、今回はパスしようかな」
「また?あんたがそう弱腰だから、橘とその取り巻きが図々しくなるんだからね? たまには顔出しなさいよ」

 雪の忠告が、重く胸に響く。わかってる。わかっているけれど、あの場に飛び込む勇気が、どうしても持てないのだ。

「控えめなところは美和の美点だとは思うけど、押しの強い奴らに好き放題言われてるのはちょっと違うと思うんだよ」

 痛い所を突かれてしまった。思わず息を飲む私を他所に、上から下まで遠慮なく雪が視線を走らせる。

「美和は素は可愛いのにさ。何ていうか……こう、服装もメイクも大人しめだしさ。容姿だけが全てじゃないけど、連中を付け上がらせる要因って案外そういう所にもあるんじゃないのかなあ」
「え……。でも、どうしたらいいのか分からないし」

 流行に左右されないベーシックなパンツスーツと就活レクチャーで習った程度のメイク術。それがファッションにさほど興味のない、私の精一杯のオシャレだった。
 
「学生時代ならいざ知らず、今のままでは勿体ない……勿体ないんだよ……」
「ちょっと、雪?」

 雪は顔を伏せてうんうん唸って腕を組む。 
 そして数秒後「よし、そうしよう!」と勢いよく立ち上がると、キラキラとした笑みをこちらに向けた。

「美和さ、今日仕事終わりに時間ある?」
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