臆病なあなたの、不完全な愛し方
「今は一人で十分やっていけるから、しばらく人は雇わないって言ってなかったっけ?」
顧問税理士の宮前裕斗が、からかうように伊山に尋ねた。
「なにか問題あるか? 数字的に、一人雇っても問題ないだろ」
「まあね。むしろ、さっさと雇うべきだと思ってたよ。お前、働きすぎ」
「一期目の社長なんて、みんなこんなもんだろ」
親友の心配をよそに、伊山はさも当然のように答えた。
宮前は、伊山のデスクの端にひとまとめにされた書類を手に取った。
「こら、勝手に見るな」
伊山の伸ばした手をひらりとかわすと、数枚めくって履歴書を確認する。
「ああ、前に勤めてた会社の子なんだ。なるほどね。人件費を計上してでも、確保しておきたい人材だったってわけね」
「……まあ、そんなところだ」
意外にも伊山が反論してこなかったため、宮前はまるで珍しい生き物でも見るかのように目の前の親友を注視した。
「珍しいね、伊山が誰かに執心するなんて」
「『執心』は使い方が違うだろ」
「おっと、それは失礼。『星野』って名前は、以前にも何度か聞いた気がしたから。やっとお前が、前を向く気になったのかなって」
伊山は宮前から書類を取り上げると、それをファイリングした。
「星野は大事な従業員だよ。変な勘繰りすんな。それに俺はとっくに前を向いてる」
「ならいいんだけど」
頑なに雇用を拒否していた伊山があっさり受け入れた女性とは、どのような人物なのか。
宮前の好奇心が掻き立てられた。
「来月、星野さんに会うのが楽しみだ」
「……絶対に、余計なことは言うなよ」
釘を刺す伊山に対し、宮前は意味深な笑みを返した。
顧問税理士の宮前裕斗が、からかうように伊山に尋ねた。
「なにか問題あるか? 数字的に、一人雇っても問題ないだろ」
「まあね。むしろ、さっさと雇うべきだと思ってたよ。お前、働きすぎ」
「一期目の社長なんて、みんなこんなもんだろ」
親友の心配をよそに、伊山はさも当然のように答えた。
宮前は、伊山のデスクの端にひとまとめにされた書類を手に取った。
「こら、勝手に見るな」
伊山の伸ばした手をひらりとかわすと、数枚めくって履歴書を確認する。
「ああ、前に勤めてた会社の子なんだ。なるほどね。人件費を計上してでも、確保しておきたい人材だったってわけね」
「……まあ、そんなところだ」
意外にも伊山が反論してこなかったため、宮前はまるで珍しい生き物でも見るかのように目の前の親友を注視した。
「珍しいね、伊山が誰かに執心するなんて」
「『執心』は使い方が違うだろ」
「おっと、それは失礼。『星野』って名前は、以前にも何度か聞いた気がしたから。やっとお前が、前を向く気になったのかなって」
伊山は宮前から書類を取り上げると、それをファイリングした。
「星野は大事な従業員だよ。変な勘繰りすんな。それに俺はとっくに前を向いてる」
「ならいいんだけど」
頑なに雇用を拒否していた伊山があっさり受け入れた女性とは、どのような人物なのか。
宮前の好奇心が掻き立てられた。
「来月、星野さんに会うのが楽しみだ」
「……絶対に、余計なことは言うなよ」
釘を刺す伊山に対し、宮前は意味深な笑みを返した。