むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

Sideシリウス~待ちに待った初夜~


「ごめんセレン、遅くな──っ!!」
 勢いよく寝室の扉を開けて、飛び込むように部屋に入った私は、ベッドの上に座る愛らしい妻に思わず言葉を止めた。

 いつもの寝間着ではなく、薄くひらひらとした煽情的なそれは、まさしく今日が初夜であることを表していた。

「大丈夫よ。お仕事、大丈夫?」
「あ、あぁ、仕事はもうほとんど終わってたから、すぐに終わらせたよ。明日からは無理なく仕事ができると思う」

 メレの町やメレノス島の状況改善やそれにおける報告書はあらかた片が付いた。
 このまま援助を継続していくことで、確実にあの領地も持ち直していくはずだ。

 仕事は大丈夫なのだが……。
 うん、言えない。
 セレンとの結婚式の余韻に浸った上これからのセレンとのあれこれを考えていたら遅くなってしまっただなんて。

 私は心の中で自分にため息をつきながら、緊張しつつもセレンの隣に腰を下ろすと、セレンから香る甘い香りにそのまま押し倒してしまいたくなる衝動をぐっとこらえる。

「今日はありがとね。結婚式、すごく……すごく嬉しかった」
「……」
 あぁ……セレンの笑顔がまぶしい。
 このままその可愛らしい唇を奪っても良いだろうか。
 いや待て私。
 こういうことはゆっくり、落ち着いて、順序を守って──。

「私、シリウスのお嫁さんになれて、すごく、すごく幸せよ」
「……」
 耐えろ。
 耐えるんだ私。
 セレンの誘惑に負けてはいけない。

「シリウス?」
 先ほどから無言を貫く私の顔をセレンがのぞき込む。
「!! あ、あぁ、ごめん。うん、私もすごく幸せだよ」
 危なかった。
 私の理性が途切れるところだった。

「ねぇシリウス?」
「な、何かな?」
 理性を何とか総動員して取り繕うように笑顔を向けると、セレンはすこしばかり頬を赤く染めてから、ためらいがちに口を開いた。

「お仕事が落ち着いたなら……また、毎日一緒に寝ましょうね。隣にシリウスがいてくれないと、なんだか、その……少し寂しくて」
「~~~~っ」
 なんっっって可愛いんだうちの妻は!!!!

「も、もちろん。一緒に眠ろう。たくさん、たくさん語り合って、ね」
「ふふ、えぇ。あぁでも……」
 そう言い淀んで、セレンは先ほど染めたばかりの頬だけでなく耳まで真っ赤にしてから続ける。

「……ぎゅって、しててほしい、です」
「……」

 あぁ、もうだめだ。
 私の鋼の理性が切れた瞬間だった。

「っ……」
「ひゃぁっ!?」
 どさり、とセレンの身体ごとふかふかのベッドへと沈みこむ。

 突然私に組み敷かれたセレンは、目を大きく見開きながらも、まっすぐ潤んだ扇情的な瞳で私を見上げている。
 まるでこれからのことを、すでに受け入れているかのように。

 あぁもう、本当に──。

「セレン」
「ん?」
「私の妻になってくれて、ありがとう」

 そして私は、セレンの唇に自身のそれを重ね、そのまま溶けるように愛を注ぎ続けるのだった。

 END

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