野いちご源氏物語 三六 横笛(よこぶえ)
「その笛は私が預かっておくべきものだろう。昔の帝(みかど)がご愛用なさった笛だが、私の叔父(おじ)にあたる親王(しんのう)様が受け継いで、衛門(えもん)の督(かみ)にお与えになった。衛門の督は子どものころから笛が得意だったからね。たしか叔父宮(おじみや)様が萩(はぎ)の宴(うたげ)を催(もよお)されたときだったよ。御息所(みやすんどころ)はそのあたりをご存じなくて、深く考えずにそなたに渡してしまわれたのだ」
苦しい言い訳をして笛をお受け取りになる。

<『大切な人に譲(ゆず)りたかった』というのは尼宮(あまみや)様に生ませた我が子のことだろう。大将(たいしょう)は勘(かん)が鋭(するど)いから、分かっているかもしれない>
思わぬところから若君(わかぎみ)の秘密が漏(も)れそうでひやりとなさる。
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