優しいkissじゃダメですか。
バレエの回転技だ。課長は右3回で1度止まり、メンテナンスするように自分の身体のあちこちを見て、それから逆回転で3回回る。
(明らかにバレエやってたひとの動きじゃん!!)
私はあぜんとする。き、綺麗だ……
すっと伸びる左腕。指先で満月を持ち上げるように。右足をすっと引く。ダンス専用の筋肉を持つ者の無駄のいっさいない動きだ。
いつもニコニコふわふわしている課長がバレエ経験者!? そんな話1度も聞いたことない!!
ゆっくりと自分の身体の動きを確かめるように右脚を上げる。最初は水平に。徐々に上に上げていく。Y字バランス。それ以上に上がる。I字バランス!!
(さっきまでシワシワのおじいちゃんだったのに!!)
水道橋のビル群の灯りが彼のステージを彩る。ゆっくり、ゆっくりと踊る彼はダンサー。曲もないのに。ただ、夜があり秋めいた風があり真夏の熱気があるだけなのに。
と、
課長がこちらを見た。ぎょっとした顔になり、紙パックをひろってそそくさと中に戻り出口へと逃げる。
「逃がすかぁ!!」
私はバッと立ち上がって出口をふさいだ。地元では負け知らずの韋駄天だった。
「この脚で逃亡する作家たちを地獄に沈めてきたんやあ!!」
(正確には家に引きずり戻したりホテルに缶詰めにした)
課長はあっさりと観念した。逃げられないと思ったらしい。素直に両手を小さく挙げる。
「なんでバレエやめはったんですか!?」
(明らかにバレエやってたひとの動きじゃん!!)
私はあぜんとする。き、綺麗だ……
すっと伸びる左腕。指先で満月を持ち上げるように。右足をすっと引く。ダンス専用の筋肉を持つ者の無駄のいっさいない動きだ。
いつもニコニコふわふわしている課長がバレエ経験者!? そんな話1度も聞いたことない!!
ゆっくりと自分の身体の動きを確かめるように右脚を上げる。最初は水平に。徐々に上に上げていく。Y字バランス。それ以上に上がる。I字バランス!!
(さっきまでシワシワのおじいちゃんだったのに!!)
水道橋のビル群の灯りが彼のステージを彩る。ゆっくり、ゆっくりと踊る彼はダンサー。曲もないのに。ただ、夜があり秋めいた風があり真夏の熱気があるだけなのに。
と、
課長がこちらを見た。ぎょっとした顔になり、紙パックをひろってそそくさと中に戻り出口へと逃げる。
「逃がすかぁ!!」
私はバッと立ち上がって出口をふさいだ。地元では負け知らずの韋駄天だった。
「この脚で逃亡する作家たちを地獄に沈めてきたんやあ!!」
(正確には家に引きずり戻したりホテルに缶詰めにした)
課長はあっさりと観念した。逃げられないと思ったらしい。素直に両手を小さく挙げる。
「なんでバレエやめはったんですか!?」