東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
「っ……そう、でしたか。申し訳ありません、事情を知らず失礼なことを……」
「いえ、これから知って頂ければいいです。ただ、わさびに惚れることだけは無いように───」
「絶対にそれはありえませんのでご安心ください」
食い気味に返事をする大介。
そして、大介の頭を少し覗いた山葵は吹き出して笑い、紀糸にこそっと耳打ちする。
「ブッ……(小声)紀糸、大介はつばめさんみたいな大人の女性が好みのようです」
「……ん? そうか、ならいい。笹にはいい刺激になるだろう」
大介がライバルではないと知った紀糸は、警戒を緩め山葵の頭を両手で撫でくり回す。はたから見たら、イチャついているようにしか見えない。
「あ。大介、見てください。わさびの言った通り、紀糸の脚の方が長いでしょう」
紀糸とじゃれつく山葵だったが、思い出したかのように、髪を乱した状態のまま、紀糸のつま先から腰の位置までを両手を広げ、並べてアピールする。
「……まぁ、少し、そうですね」
大介はまるで興味がないとばかりに適当に答えた。
「百欄さんは身長いくつですか? 日本人にしては大きいですよね、何かスポーツでも?」
妻の謎のこだわりが若干恥ずかしい紀糸だったが、大人として話を広げてみる。
「私は180センチ丁度です。高校までバスケットをしてましたが、小柄な方ですよ」
「ほぉ、バスケ。実は私も中学、高校とバスケ部でした。では、雪が解けたら是非ともノーザンヴィレッジの広場のコートで一緒に身体を動かしましょう」
「東雲さんもバスケを? はい、是非お願いします。身体がなまってるかもしれませんが」
何となくいい関係を築いていく二人を、交互に見つめた山葵は、最後に圭介と目を合わせた。そして二人は無言で頷き合う。
「紀糸の身長は185センチ。結果、身長も脚の長さも紀糸の勝利。ぼろ負けの大介のリベンジマッチは雪解け後、ノーザン主催のバスケットボール大会で、という事で決まりです」
「「……」」
紀糸がバスケをしている姿が見たいだけの山葵。今ここで、バスケットボール大会を開催することを決めた。