東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
side Kiito
「まったく……笹は男として恥ずかしくないんだろうか」
月見里にとって初めての北海道ということもあり、一泊して観光してから東京へ戻るという二人を見送った後、食事を済ませた俺とわさびは、いつものように一緒に風呂に入っていた。
百蘭氏に嫉妬する笹を見ていて、同じ男として情けない、と感じていた俺は、つい言葉に出してしまう。
「……紀糸がそれを言いますか?」
わさびの虚無の眼が俺に向けられた。
「俺はあそこまでじゃない……よな?」
「……」
「おい、無言は肯定ととるぞ。この場合、肯定ということは───……」
「……」
───くそっ……こんな死んだ魚みたいな目を向けられていても可愛いと思うなんて、俺は本当にどうかしてる……
「……まぁ、この話は終わりだ。新入社員達はどうだ? 勤務して数日経っただろ」
都合が悪くなった俺は、話を変えた。
「話を変えるとは大人げないです。新入社員は皆んな、上手くやっていけると思います。そんな三人を選びましたから」
俺は相槌を打ちながらわさびの話を黙って聞いた。
「カモメくんは、なんだか九条 蓮に似た真面目さを持ちながらその知識は後に役に立ちますし、なにより彼は自分の居場所を求めていました。ノーザンで仲間と居場所を見つけるでしょう」
───カモメ? ……名前か? 苗字か?
「コバトちゃんは、杏奈ちゃんといいコンビになってくれると思いますし、アイディアの方向性が高級嗜好なので、富裕層向けのノーザンにはピッタリです。何より彼女の父親はお爺が可愛がっていた人物で、私腹を肥やしがちな理事の中では割とマトモです」
───コバト? ……本名か?
「アオくんは、天才です。キラくんから色々吸収させて、ノーザンのIT関係を全て任せても平気なキャパがあります。彼はわさびと同じでお友達がいないので、まずはわさびがお友達第一号になりました」
───アオくん、は普通だな……お友達? まさかイケメンじゃないだろうな……ハッ───いかんいかん。こういう所だな。笹みたいにはならないぞ……
「わさびが選ぶ人間に間違いはないからな、心配はしてない。お爺も昔、俺にそう言ってたんだぞ。でもわさび……ひとつ気になったんだが……」
───まさか、名前で選んでないよな? 月見里の名前も笹の名前も、可愛いとか言ってたが……まさかな……
「書類選考の時は、よく分からないので名前で選んでました」
「……」
「そうだ紀糸、アオくんのために東雲のPC関係の専門家を寄越してください。アオくんの指示に従って必要な機材を買い揃えます」
「ああ、すぐ手配させる」
「夫が偉いと便利です」
「……お前な」
───俺達も一応まだ新婚夫婦なんだがな……