東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
結局なんだかんだと、俺達夫婦の会話の中心が仕事ばかりになってしまうのは仕方ないだろう。
わさびにとっては仕事もプライベートもその両方が生活の中心なのだから。
俺は、生き生きと仕事の話をするわさびが好きだ。
欲を言えば、俺だけに夢中になったわさびも見てみたいが、仕事もあるし寂しい思いさせるのは気が引ける。
そもそも、俺に依存するような女は面倒だ。
俺達はお互いが今の立場だからこそ、夫婦としてこんなにも上手くやっていけている。いわば、奇跡みたいな夫婦なのかもしれない。
だが……
「わさび、お前の頭にある沢山の計画の中に、俺達の子供はいるのか?」
「います、わさびは沢山産まなければなりません。最低でも東雲家の後継者となる子と、ノーザンの後継者となる子とが必要です。継ぎたくないという子がいた場合のために、四人は産まなければ不安です。双子をニ回産めば手っ取り早そうです」
悩むことなく即答されたその言葉を聞き、俺はホッとする。その理由は若干不穏ではあるが……
「そうか、いつ頃の予定だ? 俺ももう33になるからな……出来れば早めに───」
子育てには体力も必要だと以前キラの子の子守りをして実感した。若い方がいいに決まっている。
それに……
───出来れば当主の座を引き継ぐ前がいい。なるべく俺も子育てに時間を取りたいからな……
「そうですか。では早めに社員用の託児所を作って、信頼できる保育士さんと常駐の専門医を見つける必要がありますね。わさびは産んだらすぐ仕事に戻らねばなりませんから」
俺の頭を覗いたのか、相変わらずの即断即決のわさび。本当に頼もしく、気持ちがいい。
「紀糸、つばめさんと笹くんがこちらに来て、美術館の件を引き継いだら作りましょう」
「半年後だぞ? いいのか?」
「はい、わさびに二言はありません」
まっすぐに俺の目を見て頷くわさび。これまでにその瞳が嘘をついたことはない。
「よし、決まりだな」
「はい、決まりです」
風呂から出た俺は、そのままベッドでわさびを抱いた。
半年後、俺達は別に子作りだなんだと考える必要はない。ただ単に、今の夫婦性活で避妊をやめればいいだけだ。
丁度冬はリモート勤務だ。ずっと一緒にいられる。むしろ、子作りを口実に昼夜問わずしたってかまわないのではないだろうか。
───楽しみだな、子作り解禁……
俺達はこうやって毎回、二人で話し合いながら、恋人から夫婦、そして家族への階段を一段一段確実に登っていくのだろう。
「……愛してるぞ、わさび(チュッ)」
俺は隣で眠る彼女の頬に、そっと唇を寄せた。