東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
  

 それは……
 zuv.tecがプラネタリウムの映像技術の一部を公開するのは、ノーザンの完全なオフシーズンである12月から二月までの三か月間のみ。というものだ。
 
「さすがに大雪の中かき分けてくる人はそんなにいないだろうからな」
 
 相馬の提案にキラも白森も期待の眼差しで山葵をみた。
 
「ふんっ──……それでは、春になったら一斉に押し寄せてきてしまうのでは?」
 
 大介が鼻を鳴らし、逆効果だと噛みつく。
 
「そこでもう一つ提案です。わさびさん、この周辺一帯はすべてノーザンの所有だと聞いております。ここに来るまでの道路は一本道です。であれば、丘の下に入場ゲート作れないでしょうか。それならば、文字通り門前払いが可能であり、あれだけの距離があれば馬たちにも影響はないでしょう。防犯的にもいいかと思います」
 
「……」
 
 相馬のその意外な提案に、山葵は興味津々だ。
 
かべ(うぉーる)みたいなものですね」
 
「オーナー、巨人の出てくる漫画の事は今は忘れてください」
 
「……」
 
 圭介の鋭いツッコミに、なぜバレた、と山葵は虚無の眼になる。
 
「ゲートは遠隔操作で開閉でき、ノーザンの警備室とモニターでつなぐことで、無人での対応が可能です。もちろん、ある程度のリスクも考慮し、手動への切り替えも簡単に出来るようにします」
 
 目を輝かせている山葵の様子に手応えを感じた相馬は、一気にたたみかけ、説得を試みた。
 
「圭介、ノーザンも三つの壁で囲いますか?」
 
「……」
 
 完全にふざけ半分の山葵を、圭介は無視する。山葵にめっぽう甘い彼だが、こういう一面もあるのだ。
 
「その場合……もちろん、ゲートはzuv.tecの方で設置して頂けるんですよね?」
 
 山葵のその様子から、圭介は彼女が許可することを見越し、笑顔で先手をうった。実に抜け目がない。
 
 そして、圭介のその問いに答えたのは、白森だ。
 
「もちろんです。今回のキラの技術は多方面で応用がきく。それこそ、未来の技術として高く売れます。ゲートの一つや二つ、安い物です」
 
 その回答に満足した圭介は、山葵に決断を仰ぐことにした。
 
「……どうしますか、オーナー」
 
 その場の全員が、山葵の一挙一動に注目する。
 
 
 
「いいでしょう」
 
「「「っ!!」」」
 
「では、広告掲載期間は12月から二月までの三か月間、春までにゲートを設置して頂けることが条件、という事で契約成立です」
 
 ガッツポーズをとるキラ達をよそに、山葵の“いいでしょう”に込められた意味を、速やかに圭介が言葉にする。
 
「では、そのように」
 
 無表情ではあるが、相馬も眼鏡をクィッと上げて喜んでいた。
 
 
 こうして、zuv.tecは新事業のチャンスを得て、ノーザンはタダでハイテク入場ゲートをゲットすることが決まった。
 
 
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