東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
双方が満足の結果となった打ち合わせの後、キラは個人的に山葵にある相談を持ち掛けた。
「なぁわさびちゃん、バスケの試合したあのヴィレッジって、ノーザンの社員にしか分譲してないのか?」
春にお花見と同時開催で行われたバスケットボール大会。東京からキラや笹たちも招き、大盛り上がりの結果となった。その時の会場が、ノーザンヴィレッジの中央広場のコートだったのだ。
「はい。ノーザンの敷地内ですし、社員以外の人にはメリットもない立地ですからね」
一般的な分譲地よりも一区画を倍以上広くとっており、それでも全部で30区画ほどの分譲が可能だ。現在、笹と燕の家を含め、10区画が埋まっている。
「俺、別荘用にひと区画買いたいんだけど。駄目? いくらでもでいいよ。金なら余るほどあるから」
「……」
キラの突然の申し出に、山葵は一瞬悩むも、すぐに回答する。
「いいでしょう」
山葵の頭の中には、キラがこちらに滞在する機会が増えれば、アオのいい刺激にもなるということと、プラネタリウムの次回作の打ち合わせが楽になるということなど、メリットが並んでいた。
「やった、ありがと! 冬はウィンタースポーツの拠点にもなるし、夏は避暑地になるし、ゲート作るなら子供も安心だし何より自然が最高なんだよなぁ! うちの親も北海道好きで、犬連れて毎年来てるんだよ。だから、結構誰かしら滞在すると思うんだ」
キラの両親、つまり大臣夫妻ということだ。もちろんオフレコだろうが、滞在することが増えれば馬主からの信頼も一層厚くなるだろう。山葵の頭の中で、そろばんがはじかれていく。
「わかってるじゃないですか。詳しい事は圭介と話をしてください。でも、キラくんだから特別です。ご両親や健二さん、白森代表や相馬さんだけならいいですが、わさびの知らないお友達などへの貸し出しはやめてください」
メリットである部分は享受するが、リスクは負いたくない山葵。
「もちろん、それくらいの常識は持ち合わせてるよ。ひよ子があのヴィレッジの雰囲気をすごく気に入ってたんだよ。まるで海外に来たみたいだって。喜ぶだろうなぁ~」
結婚して何年経過しようとも、彼の頭の中はひよ子中心だ。
「キラくん達はマリンスポーツだけでなく、ウィンタースポーツまでするんですか?」
「するよぉ! 仕事がデスクワークだから、仕事以外では体動かすようにしてたんだよね。そしたらやればやるほどハマって、どんどん趣味が増えてった。ははは!」
アオも見習えばいいのに、と思った山葵だったが、二人の決定的な違いに気付く。
「キラくんは陽キャですからね」
「ははは! よく言われる! 馬鹿と天才は紙一重だとか! あれ、なんか違う? ははは!」
とにかく明るいキラとの会話に、山葵は若干疲労が蓄積してきていたことは秘密だ。
───きっと、わさびもアオくんと同じで陰キャなんですね……
こうして、キラたちもある意味でノーザンへの仲間入りが決まる。