東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
010
「有馬が二人います」
その日、突然ノーザンを訪れたのは、有馬の双子の兄、十六夜 皐月こと、モデルのサツキだった。
山葵と圭介、大介、有馬とが事務所で打合せをしていた所に、鼻息を荒くした杏奈が突然飛び込んできた。
あまりの興奮具合に言葉が出てこない彼女の後ろから、コバトも顔を出す。
一体何事かと思えば……
「新施設長、スーパーモデルのお兄様がカフェにいらっしゃって、弟を呼んでくれとおっしゃっています!」
コバトも頬を染めながらではあったが、上層部を前に丁寧に伝達する。
「え……皐月が?」
来訪の予定など何も知らされていなかったのか、有馬は驚いてその名をくちにした。
「有馬の双子のお兄さんですか? スーパーのモデルなのですか?」
そういった業界に関して、まるで疎い山葵。
「オーナー、スーパーとモデルの間に“の”を入れると、意味が全く変わってしまうんですよ?」
圭介がこっそりと諭す。
「ではつまり、(英語)supermodelですか?」
「オーナー、めっちゃ発音いい……カッコよ!」
少し落ち着いた様子の杏奈が、山葵に向けて目を輝かせる。
「(英語)はい、兄の皐月は海外を拠点としてモデルをしているんです。ここ最近はずっと、実家で妹の育児を手伝っていたんですけど……」
「キャッ! 新施設長までっ英語カッコよ! 何言ってるかわからないけど!」
突然英語を話した山葵に、海外暮らしの長かった有馬は、つい英語で会話を続ける。それほど、山葵の発音はネイティブに近いのだ。
二人の会話は全く理解できてはいないが、飛び交う英会話に、杏奈は一人興奮していた。
「(英語)とりあえず、会議が中断してしまい申し訳ないですが、行ってきます」
「(英語)わさびも行きます!」
有馬の双子の兄に興味津々のわさびも、彼に続いて席を立った。