東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
「つばめさんの面白いお母さんが言っていました。笹くんはわんこだから、きっと子沢山になるだろう、と。ですからわさびの考えたお家は、いざとなれば簡単に子供部屋を増やせる設計になっています」
えっへん、と胸を張り自慢げに語る山葵に、燕は驚いた表情を見せた。
なぜなら、燕は自分の母親からそのことを聞いていなかったからである。もちろん、燕は自分の母親が陰陽師の家系であり、少し人とは違う感性を持っている事を知っている。
「うちの母が、わさびちゃんにそう話したの?」
「はい。結婚式の時に」
「……わさび、それは本当に会話したのか?」
紀糸のその言葉に、山葵はどうだったかな、と思い出そうとして黙り込む。山葵の不思議な能力のことは、紀糸と今は亡き彼女のお爺しか知らない。
「……つばめさんのお母さんの顔に書いてあっただけかもしれません」
山葵は斜め上に視線を移しながら、わかりやすく適当にごまかした。そんな山葵の様子に、紀糸は小さくため息を吐く。
「母の顔に、笹くんがわんこだから、子沢山だって書いてあったの? ───……ふっ、ぁはははっ──わさびちゃんって、本当に不思議なことを言うよね。ウチの上の兄に少し似てる」
その言葉に、山葵は先日の結婚式で挨拶を交わした燕の兄、論を思い出した。
「論さんとわさびは、仲良くさせてもらっています」
「おいっわさび、誤解を招くような言い方はよせ。全然仲良くなんてないだろ」
聞き捨てならない妻の発言に、訂正を求めるケツの穴の小さい紀糸。
「紀糸も隣にいたではないですか。論さんは、わさびのお誘いに、喜んで、と言ってくれました。仲良しは成立しています」
「兄が? それはすっごく珍しいかもしれない……兄は相当わさびちゃんの事を気に入ったみたいだね。兄はあのとおり少し変わってるところがあるから、友人が少ないの。同じ経営者同士だし、わさびちゃんと東雲くんが仲良くしてくれると私も嬉しいな。ね、笹くん」
燕は柔らかに微笑み、隣の笹に同意を求める。もちろん笹は、燕の笑みにデレデレするだけで、うんうん、と相槌を打つのみ。
「論だけに、もちろんです───……紀糸、わさびに座布団ください」
「自分で要求するな」
「つまらない男ですね。キラくんがいたら、きっとくれました」
「……」
そんな東雲夫妻を前に、笑いを堪えられない燕と笹だった。