東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
 
 
 笹と燕の歓迎会が開かれた後、山葵のもとに様々な嬉しい報告が入ってきた。
 
 それは毎週行われる、定例の上層部会議でのこと───…… 
 
 まずは大介から、ノーザンの入場ゲートの設置許可が下りたとのことの報告。それにより、すでにzuv.tec側とゲート設置に向けた具体的な話を進めているとのことだ。
 
「さすがは圭介の弟です。仕事が早いですね。たい肥化処理施設の方はどうですか?」
 
「そちらも滞りなく───事前協議は完了しておりますので、すぐにでも設置工事に入れます。完成予定の2か月前を目途に廃棄物処理業関係の許可申請を行うことで、施設完成と共に他からの受け入れも可能となります。折を見て、周辺の牧場との委託契約等々の準備も進めていく予定です」
 
「大介に任せておけば、すべてはわさびの理想通りに事が進んでいきそうですね。では、たい肥の販売ルートの方はどうですか? 森林法の方は? 美術館の件は?」
 
「それらもすべて───……」
 
 圭介が必要とするのも頷けるほどに、大介は優秀だった。生意気だった態度も、紀糸の前では見せなくなり、そしていつからか山葵に対しても敬う姿勢を取り始めている。
 自信過剰で人を見下すような性格をしていた弟の性格を心配していた圭介。しかし、この一年の彼の内面的な成長は、兄の贔屓目なしに感心してしまうほどだった。
 そんな弟に、もっと頑張ってもらおうと、彼はホクホクした笑顔で次から次へと重要な仕事を任せては、大介をこき使っている。
 
 
「───すべて順調ですね。では、美術館の方はこれ以降、つばめさんを主として進めていきますので、大介も相談にのってあげてください。つばめさんが必要とすれば、補佐を雇用してもかまいません。プラネタリウムの方は───……」
 
 次から次へと山葵の口から出てくる言葉に、集まったそれぞれの主任担当者は真剣な表情でメモを取りながら頷いている。
 
 その一人である有馬は思った。
 
 ───わさびちゃんって……どんな脳みそしているんだ……頭のCPUがどれだけ高ければ、こんなにも沢山の案件を一度にすべて冷静に把握して即座に分析までして、他者への割り当てまでを会議の最中にするなんて……
 
 CPUを脳みそと考え、メモリを作業机、ストレージと呼ばれるHDDやSSDを本棚や引き出しだと例えると、彼女はその全てが通常の人間の何倍もあるのではないかと思え、感動すら覚えた。
 
 ───ノーザンはこの指揮指導者がいるからこそ、こんなにも優秀な人材が集まり、事業も安定しているんだな……俺も、この強烈なメンバーの中で霞まないようにしないと。
  
 山葵は意図せず、社員達の意欲を向上させているのだった。
 
 
 
 
「今日の会議の議案は以上ですね。では、わさびから皆さんへ連絡があります───わさびはそろそろ東雲家の御曹司を作らねばなりません。よって、種付けが上手くいけばそのうちお腹が膨らんでくると思いますので、その時は色々とご協力をお願いします」
 
 ───っ?!
 
 会議の出席者である圭介、大介、有馬の三人は、CEOからの突然の重要な発表に目をぱちぱちとさせた。圭介はもともと聞いてはいたため、このタイミングで始めるのか、と、ゆっくりと頷く。
 
「「か、かしこまりました……」」
 
 大介と有馬の二人は、ただそう口を揃えるほかなかった。
 
 
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