東雲家の御曹司は、わさびちゃんと新婚蜜月中
「知希! 巳都! 俺の天使達! 待たせたな!」
「「パパっ!」」
双子が満足するまで仔馬を堪能した後、夕食の支度があるという五郎と別れ、四人はカフェでジェラートを食べながらひと息ついていた。
そこへ、打ち合わせを終えた山葵とキラが戻ってくると、双子は一目散に父親の元へ駆けて行った。
───ようやく解放される……
紀糸の正直な感想だった。ただでさえ慣れない任務である上に、他人の子で、ましてや二人だ。
そして紀糸はこの時初めて双子の名前を知った。
「……チキンにミート?」
「ぷぷっ……わさびも初めそう思いました。ひよ子さんもよく言われる、と笑っていましたよ。黒霞という姓は長いですからね、キラくんと同じ二音ネームにしたのだそうです」
いつの間にか隣にいた山葵が、紀糸の呟きに答えた。キラの妻であるひよ子ともすでに仲がよさそうな山葵に驚きつつも、その名前の由来に納得する。
「へぇ……二音ね……」
紀糸は、後輩であるキラの天使達、もとい双子の女児はチキンにミート、と覚える事にした。
───案外覚えやすくていいな。二音じゃなくなったけど。
相変わらず、ネーミングセンスのない紀糸だった。
そしてふと、彼は自分の腕の時計に視線を移す。すでに二時間が経過していた。
「紀糸、子守りありがとうございました。お休みなのに普段の仕事より難しい任務を頼んですみません」
「ああ、まったくだ。だが貴重な体験だった。なんだかんだあっという間だったしな……わさびも打ち合わせお疲れさま」
先ほどまで双子とつないでいた手は、愛する妻の手を握っていた。
「ふふふ……紀糸はもっと疲弊しているかと思いました」
山葵はにやけ顔で紀糸の肩に頭を預け、彼の手をギュッと握り返す。
そんな彼女の不意打ちに、未だ紀糸はドキドキする。入籍から一年以上が経過してもなお、初々しさを残すのだった。
「五郎さんと健二さんがいてくれたおかげでなんとかなったという感じだな。いい予行練習になったよ」
───ハネムーンベイビーもいいかもしれないな……
そんな紀糸の妄想に、すかさず山葵がツッコミを入れる。
「何を言ってるんですか、わさびはこれから益々忙しくなります。お腹を膨らませている場合ではありません」
山葵は今は引っ込んでいる腹部を前に突き出し、両手で大きなお腹のジェスチャーをしたあと、大きくバッテンをつくった。
「それな……でもわさび、俺は思うんだが……───お前の場合は、食事のあとに膨らむ腹と妊娠も大差ないんじゃないか?」
「……」
山葵は虚無の眼で紀糸を見つめている。
その視線を向けられた紀糸は、最近では彼女が何を考えているのか、何が言いたいのか、大体わかるようになっていた。
「……まぁ、食事と違って赤ん坊はすぐには出てこないからな……」
話を変えるために適当に言っただけだったその言葉は……
「紀糸はネーミングセンスだけでなく、冗談のセンスもありませんね」
酷評される。