一夜から始まる、不器用な魔術師の溺愛
ただの遊び人かと思った彼が、実は不器用な優しさを持っていたなんて。

「ロイ……っ」

堪らず、私は彼にしがみついた。

強く抱き締め返されるたび、心まで蕩けていく。

——初めての夜は、怖いものじゃなかった。

ただ、彼に抱かれていることが幸せだった。

知らない間に、頬を伝って涙が零れていた。

「……大丈夫?」

ロイの声が耳に落ちる。

「うん……ロイが優しいから……」

掠れる声で答えると、彼は私の涙を指先ですくい取り、そっと口元に触れさせた。

「気を付けた方がいいよ。優しさは、時に凶器になるから。」

低く囁かれた直後、彼の動きが一気に激しさを増す。

「ああっ……!」

シーツを掴んで声を上げる私に、ロイの熱が深く繋がる。

「セレス……癖になりそうだ……」

「ロイ……っ」

「……愛しいよ。」

その瞬間、熱情が私の奥へと注ぎ込まれ、体が灼けるように震えた。
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