一夜から始まる、不器用な魔術師の溺愛
「ああ……熱い……」

力が抜け、私は彼にしがみつくことしかできなかった。

ぐったりと私の上に倒れ込んだロイの体温と重みが、妙に心地よくて——

初めての夜は、静かな余韻だけを残して終わった。

ロイは私を抱き寄せ、腕枕をしてくれていた。

「……あの」

「何?」

言うべきか迷ったけれど、さっきの熱を思い出すと胸がざわつく。

絶対、子種を注がれた。

「……子供、できたら?」

震える声で問うと、ロイは一瞬きょとんとして——そしてクスクスと笑った。

「それはそれで……俺達、運命共同体になるね。」

笑ってる。

私は真剣なのに。

「大丈夫、一度じゃできないよ。」

気楽そうな声色は、なぜか遊び人の響きに聞こえて胸がざらついた。

やがて夜が明け、静かな早朝の空気の中で、私達はあっさりと別れた。

「……またどこかで。」

そう言い残して背を向けたロイの姿が、胸の奥に焼き付いた。

名前と温もりだけを残して。

私の初めての恋とも知らずに——。
< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
※男性視点の物語です。 ※濃厚ラブシーンが含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
表紙を見る 表紙を閉じる
水上桃子は、結婚を考えていた恋人・渡辺隼太の浮気を疑い、敏腕弁護士・日向敬の元を訪れる。冷静沈着な敬は、わずか一週間で浮気の証拠を掴み出した。だが、そこで判明したのは、隼太の浮気相手が桃子の親友・稲田加絵だったという残酷な事実――。恋人と親友を同時に失った桃子は、裏切りに傷つきながらも気丈に振る舞おうとする。しかし敬だけは、そんな彼女の限界に気づいていた。 「あなたは悪くありません。傷つけられただけです」 静かで不器用な優しさに、桃子の凍った心は少しずつ溶かされていく。依頼人として距離を守ろうとする敬だったが、桃子を守りたい想いは次第に抑えきれなくなっていく。一方で、桃子を失った隼太は復縁を迫り始め――。 これは、人生最悪の裏切りから始まる、大人の溺愛ラブストーリー。傷ついた彼女を救ったのは、冷静な敏腕弁護士の、静かで激しい独占愛だった。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop