街角の契りは、永遠の愛に
羞恥と屈辱が一度に押し寄せ、胸が苦しくなる。

もう耐えられない。ここから逃げよう――そう思って足を踏み出した、その時だった。

「……女。」

低い声が背後から呼び止めた。

振り返ると、立派な黒塗りの馬車。その窓から鋭い金の瞳が覗いている。

「いくらだ?」

血の気が引き、体が小刻みに震える。まさか本当に声を掛けられるとは。

けれど、ここで引き下がれば母を救えない。

喉がからからに乾きながらも、何とか声を絞り出す。

「……お客さまの……言い値で……」

そう言った瞬間、内心で自分を責めた。

だめだ、これでは安く買い叩かれる。必死に頭を振り、言葉を足す。

「……は、初めてなんです。だから……少し……高値になります。」

それで断られるのなら、それでもいい。

むしろ断られてしまえ――そう願うほどに、心臓は激しく跳ね続けていた。
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