桜吹雪が舞う夜に
しばらく震えながら抱き合い、乱れた呼吸だけが狭い部屋に響いていた。
桜の髪が汗で頬に張りつき、その熱い体温を胸いっぱいに感じる。
俺は、腕の中で小さく身を丸める彼女の肩を撫でながら、喉の奥がひりつくような思いで口を開いた。
「……桜」
「……ん……日向、さん……」
かすれた声で呼ばれて、胸が痛むほどに愛おしい。
「さっき……痛かったか?」
言った瞬間、自分でも臆病すぎる問いだと分かった。 でも、どうしても聞かずにはいられなかった。
桜は少しだけ目を伏せ、それから俺を見上げて小さく首を横に振った。
「……痛いのもあったけど……それ以上に、気持ちよかったです」
息を呑む。胸の奥で固く縛られていたものが、少しだけ解けていくのを感じた。
「……本当に?」
「……はい。怖いって思ったのに……途中から、もう、それどころじゃなくて……。だから……嬉しかったです」
彼女の震える言葉に、目頭が熱くなる。 堪えきれず、額を彼女の額に押しつけて、そっと瞼を閉じた。
「……ありがとう。俺を……信じてくれて」