桜吹雪が舞う夜に


桜の柔らかな髪を撫でながら、息を落ち着ける。

けれど胸の奥の不安はまだ消えず、言葉が零れた。

「……良かった。俺のせいで、セックス自体を嫌いになったらどうしようって、正直……ずっと怖かった」

彼女がきょとんと目を瞬く。
自嘲気味に笑って、続けた。
「……また、誘ってもいいか?」

沈黙。
その一瞬が、心臓を潰されそうに重かった。
けれど桜は頬を赤らめ、少しだけ視線を逸らしてから、小さく囁いた。

「……はい。日向さんになら……また、してほしいです」

その声に、胸が熱くなる。
安堵と幸福が入り混じって、ただ彼女を抱きしめるしかできなかった。


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