桜吹雪が舞う夜に
水瀬先生は、それから興味本位なのか、色々と私に質問してきた。
「いつから日向と付き合っているの?」
「彼のどこに惹かれたの?」
「最近、どんな話をしたの?」
矢継ぎ早に投げかけられる問いに、私は曖昧に答えたり、少し笑って誤魔化したりしながら、なんとか会話を繋いでいた。
水瀬先生は終始穏やかで、冗談めかすでもなく、淡々とこちらを観察するように見つめてくる。
一通り聞き終わったあと、持っていたカップを口に運び、何気ない調子で矢を放つ。
「……彼とのセックスは、気持ちいい?」
「っ……!」
息が詰まり、思わずノートを取り落としそうになる。
頬が一瞬で熱を帯び、視線が定まらなかった。
さっきまでの他愛ない質問の延長に紛れたその一言は、あまりに自然で、そしてあまりに鋭かった。
ーー大人の余裕というより、獲物を揺さぶるための一撃。
「な、なにを……急に……っ」
声が震えてしまい、かえって彼女の思う壺のように感じた。
水瀬先生は唇の端をわずかに上げ、愉快そうにこちらを眺めていた。