牧師の息子のエリート医師は、歳下医学生に理性が効かないほど夢中です。(旧題:桜吹雪が舞う夜に)


帰宅後。
日向さんがジャケットを脱いでいる背中に、私は思わず声をぶつけた。

「……どうして、講義のこと……黙ってたんですか」

日向さんの動きが止まる。
静かな部屋に、時計の音だけが響いた。

「……どこで聞いた?」

「……水瀬先生から」
胸の奥がざわめき、声が震える。
「私、知らなかったんです。そんな大事なこと……どうして言ってくれなかったんですか」

日向さんはゆっくり振り返り、視線を伏せた。
「……心配させたくなかった。ただ、それだけだ」

「でも――!」
言葉が溢れる。
「それって、私には何も話せないってことですか?
日向さん、この間だってお母さんのこと、私が真剣に聞くまで隠そうとしてましたよね?本当に大事なことを全部隠して……私、ただ笑っていればいいんですか?」

日向さんの眉がかすかに寄る。
「……違う。そういうことじゃない」

互いの思いがぶつかり合い、沈黙が重く降りた。


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