牧師の息子のエリート医師は、歳下医学生に理性が効かないほど夢中です。(旧題:桜吹雪が舞う夜に)
日向さんは目を伏せ、深く息を吐いた。
「桜。聞いてくれ」
彼の声は低く、それでもどこか必死さを帯びていた。
「本当に、お前が心配するようなことは何もない。
別に講義の担当を外されたところで、俺は面倒な出世レースにも、人間関係のしがらみにも興味はない」
私は唇を噛む。
「俺はただ、目の前の患者を診ていられれば、それでいい。
……お前と一緒に過ごせれば、それで十分なんだ」
日向さんの言葉に、胸が熱くなる。けれど――どうしても納得できなかった。
「……十分じゃないです!」
気づけば声を荒げていた。
日向さんが目を見開く。
「私だって……! 大事なことはちゃんと話してほしいんです。
守られるだけなんて嫌です。
隠されて、“心配することはない”って言われる方が、よっぽど苦しいです!」
息が乱れ、手が震える。
「私、ただ笑ってるだけの人形じゃない……!
日向さんの痛みも、不安も、ちゃんと知りたいんです!」
日向さんは言葉を失い、ただ黙って私を見つめる。
その目には明らかに戸惑いの色が浮かんでいた。