鳥籠の中
鳥籠

朝起きると、そこにはいつもと変わらない光景が広がっていた。


あぁ、またここ……


これが夢だったらいいのに、そう何度願ったことか……


「あっ、起きたんだね。初奈」


落胆しながら何とかベットから起き上がったところで、声がした。


この世で最も嫌いな男の声が……


「時雨……」


暗い瞳をしながら扉の方に目を向けると、そこには幼馴染みだった男が立っていた。


「朝ごはん、できたよ。一緒に食べよう?」


「いらない。時雨1人で食べたら?」


「初奈ったらいつもそう言うよね。ご飯食べないと、いつか倒れちゃうよ」


「別にそうなっても私は構わない」


むしろ、そうなった方がいいとさえ思ってしまう。


時雨から逃れることができるなら──。


「駄目だよ。初奈が倒れるなんてことになったら、僕はこの世を恨んじゃう」


にこりと笑ってはいるけど、瞳には狂気が滲んでいた。


あぁ、本当にこいつは狂ってる……


< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop