ハイスペ男子達の溺愛が止まりません!

1,プロローグ

「ここが今日から通う学校……!」
煌びやかな校舎を前に立ち止まってキョロキョロと辺りを見回してしまう。
「わぁ……!」
一歩を踏み出せば、声に出さずにはいられなかった。
草木は丁寧にカットされていてどれも長さが同じだし、アーチ状に入口まで続いている花はとても綺麗でまるで絵画を見ているみたいだった。
……流石私立。
としか言えないほど整備された庭を目にした私は、圧巻されてしまったというわけだ。
右を見ても左を見てもお城を連想させる白を基調とした建物を次々と通り過ぎながら、私は目的の体育館へと向かう。
「キャー!」
「かっこいい!」
ちょうど体育館が見えてきたその時、後ろがザワザワと騒ぎ出したのが耳に入った。
なんだろうと不思議に思って振り返ると、そこには息を呑むほど顔の整った男子5人組が女子の熱い視線の中を堂々と進んでいる姿が目に入る。
私はその光景に思わずうっと顔を顰めた。
その周りの女子達とは違う反応に、5人のうちの1人——まるでエメラルドの様な艶やかな髪の男の子が興味深そうに目を瞬かせ、こちらに一歩、二歩と足を進める。
な、なんで!?
それで私は慌てて体育館の人混みに身を隠くした。
あ、危なかった……。
なんとか逃げ切ることに成功して、ほっと息を吐く。
あんなに目立ってる男の子に声なんてかけられたら、私まで目立っちゃうもん。
更に最悪なことに、女子の反感まで買ってしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。
まぁ、気のせいなら気のせいで良い。
事前に説明されていた席に向かいながら、私はもう一度心に決める。
中学こそは絶対に目立たない様にしなくちゃ……!
今の私の格好はおさげに分厚い眼鏡をしていて顔がほとんど見えないというめちゃくちゃ地味なものだ。
まさにガリ勉ですと言ったようなその容姿にしたのにも理由がある。
ここは超がつくほどの進学校。
周りは勉強ばかりしてきた子が多いので、この方が目立たなかったりするのだ。
……もう2度と同じことは繰り返さない。
その為には目立たない必要があるのだ。
ぎゅっと無意識のうちに拳を握っていた。
だからあんないかにもモテそうな男子達とは関わらないに越したことはない。
万が一を考えて逃げたのが正解だったなんて、この時の私はまだ知る由もなかった。
 
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