ハイスペ男子達の溺愛が止まりません!
16,私にできること
……『自分が正しいと思ったことを貫き通す』。
そのことについてずっと考えていた。
だって人にはそれぞれの正義があって、それが個人間の善か悪かを決めているから。
私の“正しい”を貫くってことは、私の正義を貫き通すと言うことだ。
学園長先生は『私なら大丈夫』だって言っていたけど、私は一度……ううん、何度も失敗している。
ずっと正しいって思っていたことが私を苦しめることもあった。
あの男の子に恐れられたように、私の力は怖いものなのだろう。
だから、それを使わない為に私は知識を身につけようとした。
弁護士を目指すという目標を掲げて。
でも……。
でも、それじゃあダメなんだ。
ただ、向き合わずに逃げているのと同じ。
私はこの力を“正しく”使う方法を身につけるべきだったんだ。
……あーあ、きっとこんな人が多い場所で戦ったら目立っちゃうだろうな。
それこそ、また怯えたあの目を向けられることにつながるだろう。
それに、今度こそ退学になるかもしれない。
せっかく頑張って勉強したんだけどな。
そのまで考えて、口角を上げる。
でも、そんなことよりも大事なのは……
目を閉じると、後ろにいるみんなが見える気がした。
大丈夫、私にはこの人達が付いている。
私は戦うんだ。
……大切な人を、守る為に!
キッと目の前にいる男を睨みつけると、ニヤッと嫌な笑みを返された。
「ようやくやる気になってくれたみたいで良かったよ。……返してやれ。」
突き飛ばされるようにして、私達の方へ来た橙山くん。
「大丈夫?怪我してない?」
それを受け止める形になった私は慌てて橙山くんを支えてそう問いかける。
「うん、大丈夫。……ごめん。」
「ううん。元はと言えば私のせいだから。こっちこそ、巻き込んでごめんね。」
私は橙山くんを緑川くんに預けて、再び男の方を見た。
「俺の部下が世話になったようだな?」
ニヤニヤと口は笑っているのに、目は鋭いままで威圧感を覚える。
「……あなたたちが恐喝なんてするからでしょう?」
まるで私が悪いとでも言いそうなその物言いに反論する。
「はっ、活きが良いのは別に悪いことじゃないが、時と場合を考えろよ。」
そう言って、一気に距離を詰められる。
速い!
「……っ」
ギリギリのところで拳をかわした私の頬に汗がつたう。
あ、危なかった……!
「へぇ、今の避けるんだ。」
楽しそうに笑う目の前の男に悪寒が走る。
っ、また来た!
咄嗟に後ろに避けて、後悔する。
さらに連続で攻撃が来たことで、上手くかわせないと悟ったからだ。
ダメだ、重心が後ろにある。
このままじゃ……!
……いや、諦めたらダメ!
この勢いのまま……えいっ。
地面を思いっきり押して、空中で一回転をする。
その瞬間、視界がクリアになった。
えっ、あれ……!?
バリンッ
嫌な音がして、音のする方に目を向けると、私がさっきまでかけていた眼鏡が無惨な姿で落ちていた。
な、ななっ……!
慌てて自分の顔を触って見ると、やっぱり眼鏡はどこにもなかった。
行き先の宙ぶらりんな怒りを睨むという形で目の前の男にぶつけると、何故か顔を赤らめられてしまった。
怒ってる?……わけではなさそう?
なら、この反応は一体……?
「「「君(あなた)は……!」」」
後ろに何かあるのかと思い、振り返ると3人の声が重なった。
桃瀬くんと橙山くんと、青柳くんも?
まるで私のことを知っているかのような反応に首を傾げる。
緑川くんはあちゃーと言ったように頭を押さえてるし、赤羽くんは目を見開いたまま固まってる。
どうして……?
なんとも不思議な光景だ。
「白雪ちゃん、僕だよ。覚えてない?ほら、公園で会った……」
「白雪さんが、あのピアニスト……」
「私のこと、覚えてませんか?入試の時に筆記用具を貸していただいた……」
かと思えば3人同時に話し始める。
ちょっと待って、順番に!
私、聖徳太子じゃないから……!
唯一変化のない緑川くんに助けてと視線を送ると、が ん ば れ と口パクされてしまった。
うぅ、唯一の頼みが……。
「……お前、」
どうしようかとあたふたしているとフリーズしていた男の声が聞こえて、咄嗟に振り返る。
もしかして、放っておいたの怒ってる!?
ヒヤヒヤとしながらそーっと男の方を見ると、
「お前、俺の女にならないか?」
………………え?
そんなとんでもない言葉が聞こえた。……気がした。
いや、きっと気のせいだよね。
だってさっきまで戦ってた相手だよ?
そんなことあるわけ……うん、きっと聞き間違え……
「どうだ、悪くない話だろ?」
じゃ、ないかもしれない……。
「な、何言って——」
「悪いけど、俺の姫は君なんかには渡せないかな。」
いつのまにか私の前に来ていた緑川くんの背中に庇われたことで、私の言葉は遮られた。
「俺“たち”の、でしょ。」
桃瀬くんが隣に来てくれる。
「そうだ。お前なんかに渡すもんか!」
赤羽くんが声を張り上げて言う。
「……あなたたちに渡すはずもないでしょう?」
青柳くんもそばにきて、眼鏡をクイッと上げた。
「白雪さんは、大事な人だから、渡さない……!」
橙山くんまで……!
「大丈夫だよ、白雪さん。俺たちが付いてるから。それに、白雪さんはあんな乱暴なやつ、嫌だもんね?」
緑川くんがニッコリ、とそれはそれは良い笑顔を浮かべながら問いかける。
「……う、うん。」
これは逆らったらダメなやつだ……!
そう直感的に思った私は肯定する。
まぁ、私の意思に反した答えでもないし。
「なら、俺が乱暴じゃなければ可能性はあるんだな?」
「……はい?」
突拍子のない言葉に思わず聞き返した。
「よし、お前ら撤収するぞ!」
その返事を肯定と捉えたのだろうその人は仲間に解散するよう促す。
あ、あれ……?
あっという間に不良たちはいなくなってしまった。
解決、した?
ほっとしたのか、私はペタンとその場に座り込んでしまう。
「大丈夫?白雪さん。やっぱり怖かったよね。」
手を差し伸ばしてくれる緑川くんにお礼を言いながら自分の手を重ねて立ち上がる。
「あ、はるちゃんずるい!しれっと手を繋ぐなんて!」
ぎゅっと反対側の手を桃瀬くんに握られる。
「白雪ちゃん、こうやったら怖くないでしょ?」
そしてニコッと可愛らしい笑顔を向けられた。
かわいい!
「うん、ありがとう。」
玲央くんの笑顔は癒されるなぁ。
「おい、春翔も玲央も繋いだら、俺の繋ぐ場所がないじゃないか!」
赤羽くんの言葉にコクンコクンと橙山くんが激しく同意してる。
青柳くんもチラチラとこっちを見てるし……。
えっと、解決したん、だよね……?
私はみんなの変わりように困惑することしかできないのだった。
そのことについてずっと考えていた。
だって人にはそれぞれの正義があって、それが個人間の善か悪かを決めているから。
私の“正しい”を貫くってことは、私の正義を貫き通すと言うことだ。
学園長先生は『私なら大丈夫』だって言っていたけど、私は一度……ううん、何度も失敗している。
ずっと正しいって思っていたことが私を苦しめることもあった。
あの男の子に恐れられたように、私の力は怖いものなのだろう。
だから、それを使わない為に私は知識を身につけようとした。
弁護士を目指すという目標を掲げて。
でも……。
でも、それじゃあダメなんだ。
ただ、向き合わずに逃げているのと同じ。
私はこの力を“正しく”使う方法を身につけるべきだったんだ。
……あーあ、きっとこんな人が多い場所で戦ったら目立っちゃうだろうな。
それこそ、また怯えたあの目を向けられることにつながるだろう。
それに、今度こそ退学になるかもしれない。
せっかく頑張って勉強したんだけどな。
そのまで考えて、口角を上げる。
でも、そんなことよりも大事なのは……
目を閉じると、後ろにいるみんなが見える気がした。
大丈夫、私にはこの人達が付いている。
私は戦うんだ。
……大切な人を、守る為に!
キッと目の前にいる男を睨みつけると、ニヤッと嫌な笑みを返された。
「ようやくやる気になってくれたみたいで良かったよ。……返してやれ。」
突き飛ばされるようにして、私達の方へ来た橙山くん。
「大丈夫?怪我してない?」
それを受け止める形になった私は慌てて橙山くんを支えてそう問いかける。
「うん、大丈夫。……ごめん。」
「ううん。元はと言えば私のせいだから。こっちこそ、巻き込んでごめんね。」
私は橙山くんを緑川くんに預けて、再び男の方を見た。
「俺の部下が世話になったようだな?」
ニヤニヤと口は笑っているのに、目は鋭いままで威圧感を覚える。
「……あなたたちが恐喝なんてするからでしょう?」
まるで私が悪いとでも言いそうなその物言いに反論する。
「はっ、活きが良いのは別に悪いことじゃないが、時と場合を考えろよ。」
そう言って、一気に距離を詰められる。
速い!
「……っ」
ギリギリのところで拳をかわした私の頬に汗がつたう。
あ、危なかった……!
「へぇ、今の避けるんだ。」
楽しそうに笑う目の前の男に悪寒が走る。
っ、また来た!
咄嗟に後ろに避けて、後悔する。
さらに連続で攻撃が来たことで、上手くかわせないと悟ったからだ。
ダメだ、重心が後ろにある。
このままじゃ……!
……いや、諦めたらダメ!
この勢いのまま……えいっ。
地面を思いっきり押して、空中で一回転をする。
その瞬間、視界がクリアになった。
えっ、あれ……!?
バリンッ
嫌な音がして、音のする方に目を向けると、私がさっきまでかけていた眼鏡が無惨な姿で落ちていた。
な、ななっ……!
慌てて自分の顔を触って見ると、やっぱり眼鏡はどこにもなかった。
行き先の宙ぶらりんな怒りを睨むという形で目の前の男にぶつけると、何故か顔を赤らめられてしまった。
怒ってる?……わけではなさそう?
なら、この反応は一体……?
「「「君(あなた)は……!」」」
後ろに何かあるのかと思い、振り返ると3人の声が重なった。
桃瀬くんと橙山くんと、青柳くんも?
まるで私のことを知っているかのような反応に首を傾げる。
緑川くんはあちゃーと言ったように頭を押さえてるし、赤羽くんは目を見開いたまま固まってる。
どうして……?
なんとも不思議な光景だ。
「白雪ちゃん、僕だよ。覚えてない?ほら、公園で会った……」
「白雪さんが、あのピアニスト……」
「私のこと、覚えてませんか?入試の時に筆記用具を貸していただいた……」
かと思えば3人同時に話し始める。
ちょっと待って、順番に!
私、聖徳太子じゃないから……!
唯一変化のない緑川くんに助けてと視線を送ると、が ん ば れ と口パクされてしまった。
うぅ、唯一の頼みが……。
「……お前、」
どうしようかとあたふたしているとフリーズしていた男の声が聞こえて、咄嗟に振り返る。
もしかして、放っておいたの怒ってる!?
ヒヤヒヤとしながらそーっと男の方を見ると、
「お前、俺の女にならないか?」
………………え?
そんなとんでもない言葉が聞こえた。……気がした。
いや、きっと気のせいだよね。
だってさっきまで戦ってた相手だよ?
そんなことあるわけ……うん、きっと聞き間違え……
「どうだ、悪くない話だろ?」
じゃ、ないかもしれない……。
「な、何言って——」
「悪いけど、俺の姫は君なんかには渡せないかな。」
いつのまにか私の前に来ていた緑川くんの背中に庇われたことで、私の言葉は遮られた。
「俺“たち”の、でしょ。」
桃瀬くんが隣に来てくれる。
「そうだ。お前なんかに渡すもんか!」
赤羽くんが声を張り上げて言う。
「……あなたたちに渡すはずもないでしょう?」
青柳くんもそばにきて、眼鏡をクイッと上げた。
「白雪さんは、大事な人だから、渡さない……!」
橙山くんまで……!
「大丈夫だよ、白雪さん。俺たちが付いてるから。それに、白雪さんはあんな乱暴なやつ、嫌だもんね?」
緑川くんがニッコリ、とそれはそれは良い笑顔を浮かべながら問いかける。
「……う、うん。」
これは逆らったらダメなやつだ……!
そう直感的に思った私は肯定する。
まぁ、私の意思に反した答えでもないし。
「なら、俺が乱暴じゃなければ可能性はあるんだな?」
「……はい?」
突拍子のない言葉に思わず聞き返した。
「よし、お前ら撤収するぞ!」
その返事を肯定と捉えたのだろうその人は仲間に解散するよう促す。
あ、あれ……?
あっという間に不良たちはいなくなってしまった。
解決、した?
ほっとしたのか、私はペタンとその場に座り込んでしまう。
「大丈夫?白雪さん。やっぱり怖かったよね。」
手を差し伸ばしてくれる緑川くんにお礼を言いながら自分の手を重ねて立ち上がる。
「あ、はるちゃんずるい!しれっと手を繋ぐなんて!」
ぎゅっと反対側の手を桃瀬くんに握られる。
「白雪ちゃん、こうやったら怖くないでしょ?」
そしてニコッと可愛らしい笑顔を向けられた。
かわいい!
「うん、ありがとう。」
玲央くんの笑顔は癒されるなぁ。
「おい、春翔も玲央も繋いだら、俺の繋ぐ場所がないじゃないか!」
赤羽くんの言葉にコクンコクンと橙山くんが激しく同意してる。
青柳くんもチラチラとこっちを見てるし……。
えっと、解決したん、だよね……?
私はみんなの変わりように困惑することしかできないのだった。