社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「この女……!」

振り上げられた手――殴られる!と反射的に目を閉じた、その時だった。

「はい、ストップ!」

鋭い声が響く。

ご令嬢たちがハッとして振り返ると、そこには涼しい顔の高峰社長が立っていた。

驚きに染まる彼女たちの表情。

私は、救いの光を見つけたように社長を見上げてしまった。

「それは、ご令嬢としてどうかと思うよ。」

静かな声に、ご令嬢は振り上げた腕をゆっくりと下ろした。

「まだ分かってないんだな。」

低く響く声とともに、高峰社長は彼女の手首を軽く押さえた。

「これ以上――俺の大切な人を傷つけるな!」

その言葉は鋭くも温かく、夜会場の空気を一瞬で変えた。

ご令嬢たちは呆然と立ち尽くし、視線の先で私の鼓動だけが大きく響いていた。

次の瞬間、社長はポケットからルームキーを取り出し、無造作に掲げる。
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