社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「遥香、行くよ。」

「はい……」

震える声で返事をし、私は自然に彼の背中を追った。

「まさか!その女と泊まる気⁉」

背後から悲鳴のような声が飛んでくる。

振り返りもせず、直哉はふふんと笑った。

「そうだけど?――文句ある?」

その圧倒的な余裕に、ご令嬢たちは言葉を失い、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

エレベーターの中、重い沈黙を破ったのは直哉さんだった。

「怖い思いをさせたね。」

その声と同時に、そっと私の肩に彼の上着がかけられる。

温もりがふわりと広がり、胸がじんと熱くなった。

「いいえ……高峰社長が来てくれたので、助かりました。」

心からの言葉に、彼はわずかに微笑む。

「君は強いな。」

そう囁きながら、また抱き寄せてくれる。

――いったい、これまで何度この腕に包まれただろう。
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