社長、社内恋愛は禁止のはずですが
胸が締め付けられるように高鳴り、思わず両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

その時、不意に照明が落とされ、部屋が柔らかな暗がりに包まれる。

「ほら、おいで。」

低く甘い声が闇を震わせた。

その一言に足が勝手に動き、気づけば彼の元へ吸い寄せられていた。

「社長……」

震える声を落とすより早く、ぐっと腕の中に抱きかかえられる。

強くも優しいその抱擁に、全身の力が抜けていった。

――ああ、もう逃げられない。

私は今夜、この人のものになる。

お姫様抱っこされて辿り着いたのは、柔らかな光が差し込むベッドルームだった。

すでにシーツは整えられ、布団がめくってある。まるで、私を待っていたかのように。

「ふふ。準備はできた?」

優しく笑む直哉さんの顔が目の前に近づく。
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