社長、社内恋愛は禁止のはずですが
毅然と処分を下す姿は、誰よりも冷静で、誰よりも社員を守っていた。

その日を境に、私の中で社長はただの上司ではなくなった。

胸の奥で、確かな恋が芽生えてしまったのだ。

私は社長を真っ直ぐに見据えた。

「三年前のこと、覚えていますか?」

「三年前?」

やはり、社長にとっては数ある案件のひとつに過ぎないのだろう。

社員を守った、それだけの出来事。

けれど私にとっては――人生を変えた瞬間だった。

「……私は社長に救っていただきました。」

思わず声が震える。

「えっ?」

直哉が驚いたように眉を動かす。私は顔を上げ、真っ直ぐに見つめた。

「それから社長は、私のヒーローなんです。」

頬が熱を帯びているのを自覚しながら、私は言い切った。

そしてこれ以上は耐えられず、社長の脇をすり抜けるように歩き出す。

「水城――!」

低い声が呼び止めると同時に、腕を掴まれた。
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