社長、社内恋愛は禁止のはずですが
こんな切ない思いを抱えながら、残りの時間を仕事に費やさなければならないなんて――。

直哉さん。私も、直哉さんを愛しています。

そう胸の内で呟いた瞬間、込み上げるものを抑えきれず、頬を熱い涙が伝った。

その時、カチャリとドアが開く音が響く。

「すみません、中にいたんですね。」

はっとして振り返ると、一人の女性が社長室に入ってきていた。

慌てて立ち上がり、涙を拭ったが遅い。

「大丈夫ですか?」

心配そうに近づいてきたその人は、私の顔を覗き込む。

どうしよう――泣いている姿を見られてしまった。

恋のせいで涙を流しているなんて、絶対に言えない。

でも、ただ「平気です」と笑ってみせるには、胸が苦しかった。

「少し……目にゴミが入っちゃって。」

苦し紛れにそう答えると、その人はまだ疑わしげな顔をしていた。

社長室に残る甘い香りや、赤く火照った頬。

――気づかれていないだろうか。

心臓が不安で早鐘を打つ。
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