社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「私、社長秘書の高森葵です。」

整った顔立ちに落ち着いた物腰――私と同じくらいの年代で、社長秘書を務めているなんて。

優秀な人なのだろう。

「秘書……」

思わず呟くと、彼女はじっと私を見つめた。

「あの、もしかして……社長のことで泣いてるんですか?」

「えっ……」

胸がドキリと鳴った。まさか核心を突かれるなんて。

「いえ。ただ、社長に想いを寄せる方が、ここでよく泣いていらっしゃるので。」

淡々とした声に、私は耳を疑った。

――社長に想いを寄せる人が、他にも?

つまり、私以外にもここで涙を流した女性がいるってこと?

「それは……どういう意味ですか?」

思わず問い返す声が震えた。

高森秘書は小さく微笑み、首を傾げる。

「社長、あの容姿なんで……女性社員によく告白されるんです。」

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