社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「あら、この香り……」

「えっ……」

その瞬間、背中を冷たい汗が伝った。

西野部長の目が、まるで私を射抜くようにじっと見つめてくる。

「水城、会議が終わったらちょっと時間くれる?」

柔らかい声色なのに、拒否できない圧力があった。

「はい……」

震える声で答えながら、心臓が跳ねる。

――もしかして。

直哉さんの香水の香り……?

あれだけ密着していたのだから、私の服や髪に移っていてもおかしくない。

気づかれた? それとも、まだ探りを入れているだけ?

どちらにしても油断はできない。

会議室に足を踏み入れた瞬間も、あの鋭い眼差しが背中に突き刺さる気がして、私は必死に呼吸を整えた。

ミーティングルームに集まったのは、社長、営業部長、企画部の西野部長、そして私。

わずか四人だけの会議は、重苦しい空気になるかと思ったが、企画書を手にした二人の反応は意外なものだった。
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