社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「後……同じ香水の匂いがするって言われました。」

思い切って打ち明けると、直哉さんは「ああ……」と低く唸った。

心当たりがあるらしく、苦笑いを浮かべる。

そして次の瞬間、ふっと大きな声を出した。

「あーあ。この辺りが潮時か。」

ハンドルを握る手が緩み、赤信号で停まると彼は背もたれに体を預けた。

「この香水、けっこう気に入ってたんだけどな。」

その言い方があまりに無造作で、思わず笑ってしまいそうになる。

でも、すぐに真剣な目で私を見据えた。

「いっそ……同じ香水を買おうか。」

熱を帯びた瞳に射抜かれ、心臓が大きく跳ねる。

――それは、偶然を装うため? それとも、ふたりの秘密を共有するため?

「直哉さん……」

顔が熱くなるのを抑えきれない。

香りすらも、私とひとつにしようとするこの人の溺愛が、怖いくらいに甘くて――。
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