社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「もう一つだけ、聞いてもいいですか。」

思い切って声を出すと、直哉さんは運転席で穏やかに頷いた。

「いいよ。遥香に秘密はないよ。」

その言葉を信じて、私は胸の奥の疑念をぶつける。

「どうして……直哉さんに告白した女性は、直哉さんの香水の匂いがするんですか。」

問いかけた瞬間、心臓がぎゅっと締めつけられた。

直哉さんは無表情のまま、視線を前に向けてハンドルを握りしめている。

「その……ただ一緒にいるだけじゃ、香りって移らないと思うんです。」

言葉を重ねる度に、喉が震える。

「私と同じことを……告白してきた女性にもしているんですか。」

返事がない時間が、怖い。

「参ったな。」

直哉さんはハンドルに額を押しつけるようにして、はぁーっとため息をついた。

「それも……西野情報?」

「はい。」

素直に答えると、彼は肩をすくめ、車を静かに脇道へ入れていった。
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