社長、社内恋愛は禁止のはずですが
一瞬で熱が頬に広がる。

「も、もう……」

恥ずかしくて顔を伏せると、彼は優しく囁いた。

「遥香が笑ってると、俺まで満たされるよ。」

カフェのざわめきの中、二人だけの世界が広がっていた。

「直哉さん。」

思わず名前を呼ぶと、彼は少し首を傾げて「ん?何?」と穏やかな眼差しを向けてきた。

私はグラスに差したストローをそっと口に含み、勇気を振り絞る。

「私、幸せです。」

「ほお。それは誰のおかげ?」

わざとらしく目をぱちくりさせるから、胸がむずがゆい。

「もうっ!直哉さんが私を幸せにしてくれるんですっ。」と、思わず頬を膨らませてしまった。

すると彼は豪快に笑う。

「ふははは。ありがとう。」

彼は最後のあさりを口に運び、満足そうに頷くと、ふっと真剣な声色に変わった。
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