社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「俺が誰かを幸せにできてるなんて、不思議だな。」

一瞬だけ見せた弱さに、胸がきゅんとする。

「それが遥香なら、とても嬉しいよ。」

柔らかな笑顔と共に告げられたその言葉は、心の奥深くまで沁み込んでいった。

私はただ、幸せに溺れるように微笑み返すしかなかった。

ランチを終えると、直哉さんはホテルのラウンジに私を導いた。

重厚な椅子に並んで腰を下ろすと、柔らかな照明が二人を包み込む。

「戻らなくていいんですか」と尋ねると、彼はわずかに口元を緩めて首を振った。

「直ぐに戻ったら、また社長と社員に戻ってしまうだろ。」

その一言に、胸がじんわりと熱くなる。

隣に座った直哉さんが、そっと私の手を握り込んだ。

大きな掌に包まれるだけで、心臓が高鳴る。
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