社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「……そういう顔は、俺の前だけにしろ。」

「えっ……」

思わず顔を上げた。

視線が絡む。真剣さと、どこか茶目っ気を含んだ光。

社長は小さくクスッと笑い、背を向けて歩き去っていった。

残された私は、ただその背中を見送るしかなかった。

――もしかして、気づかれた?

自分の想いがすでに隠しきれていないのではないか。

胸の奥で不安と甘いときめきがせめぎ合い、私はしばらくその場に立ち尽くすことしかできなかった。

翌日。デスクに向かって新しい企画を考えていたけれど、頭に浮かんでくるのは高峰社長のことばかり。

あの囁きと笑顔が離れなくて、集中しようとしてもペンが止まる。――どうしよう、全然うまくいかない。

その時だった。

「水城、この案件お願いしたいんだけど。」

声をかけてきたのは営業部の南條だった。

「どれ?」

私は椅子から立ち上がり、資料を差し出す彼の横に立つ。
< 16 / 273 >

この作品をシェア

pagetop