社長、社内恋愛は禁止のはずですが
南條は同期で、仕事の相談もプライベートの愚痴も気軽に話せる相手だ。

彼が営業で持ち込んだ案件を、私が企画に落とし込むことも多い。

「新規の取引先でさ。実績を積みたいから、どうしても水城にやってほしいんだ。」

頼られる笑顔に、少しだけ胸が軽くなる。

「……任せて。」

つい力強く答えてしまう。いつもお世話になっているから、断る理由なんてない。

けれど心の奥底では、高峰社長の顔がちらつき、どうしても切り替えられない自分がいた。

その時だった。ふと顔を上げると、遠くにいる高峰社長と目が合った。

――えっ? 私を見ている?

社長は社長室に籠ることがない。

執務フロアの一番奥に席を構え、全体を見渡している。

だから決裁書類もすぐに通るし、早ければ即日でハンコが押される。

社員にとっては頼もしい存在。

けれど今、この視線の鋭さは正直、仕事に集中できなくなるほどだ。

心臓がうるさく鳴り、落ち着いて資料も読めない。
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