社長、社内恋愛は禁止のはずですが
その横顔を見て、私は胸がじんとした。

きっと幼い頃の彼にとって、それは特別な“家庭の味”だったに違いない。

私は思わず直哉さんの手をぎゅっと握った。

「じゃあ、今日は肉じゃがにしますか。」

彼は驚いたように目を見開き、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。

「本当?嬉しいな。」

まるで子どものように無邪気に喜ぶ姿に、私の方が照れてしまう。

二人でスーパーの通路を歩き、じゃがいも、玉ねぎ、人参、牛肉をかごに入れていく。

何気ない作業なのに、並んで歩くと自然と夫婦みたいに見える気がして胸が熱くなる。

「家庭料理って、こんなに楽しみになるんだな。」

直哉さんがそう呟いた時、私もまた同じ気持ちでいると気づいた。

これはただの買い物じゃない。二人で新しい生活を始める、大切な一歩だった。
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