社長、社内恋愛は禁止のはずですが
そして私は直哉さんが見守る中、肉じゃがを作った。

包丁を握る手が少し震えた。

背後から「焦らなくていい。ゆっくりでいいんだ」と彼が声を掛けてくれる。

心が落ち着いていった。

仕上げに甘めの味付けをして、付け合わせにサラダも添えると、テーブルが一気に家庭の食卓のようになった。

「いただきます。」

直哉さんは箸を取り、肉じゃがを口に運ぶ。

ひと口頬張った瞬間、ふわりと笑みが広がった。

「うん、美味しい。」

その一言に胸が熱くなる。

「お母さんの味に似てます?」

恐る恐る尋ねると、直哉さんは首を横に振って微笑んだ。

「おふくろの味はおふくろの味。遥香の味もいいよ。」

その言葉に胸がじんわりと満たされる。

私が作った料理を、この人が「いい」と言ってくれる。
< 165 / 273 >

この作品をシェア

pagetop