社長、社内恋愛は禁止のはずですが
私が答える前に、岸本さんが一歩前に出て、嬉しそうに返事をする。その横顔はどこか誇らしげだった。

「まずは、この企画部のことを知りたいから……そうだな。」

篠宮部長の視線が岸本さんに注がれる。

「岸本さん、詳しく教えてもらえる?」

「はい、ぜひ!」

岸本さんは張り切った声を出して、篠宮部長と一緒にミーティングルームへと入って行った。

扉が閉まる音が、やけに響いた気がする。

私はその場に残され、デスクに戻った。

(私より先に、岸本さんを選ぶんだ……)

篠宮部長は部下の信頼をすぐに得そうな人だった。

そんな人に真っ先に認められるのは、いつも自信に満ちた岸本さん。

私は胸の奥に、チクリとした痛みを覚えた。

しばらくすると、ミーティングルームの扉の向こうから楽しそうな笑い声が響いてきた。

岸本さんと篠宮部長が笑っている。

新しく来た部長は、案外気さくな人なのかもしれない。
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