社長、社内恋愛は禁止のはずですが
でも、その笑い声に胸がざわつくのを抑えられなかった。

やがて扉が開き、岸本さんが満足げな表情で戻って来た。

「次は、水城さん。」

篠宮部長の声に、私は思わず背筋を正した。

「時間を取らせてごめんなさいね。」

そう言って彼女はノートを開き、さらさらと書き込まれたページをめくった。

「水城さんは、今社長案件を担当していると聞いているけれど?」

「はい。今ちょうど第一稿をブラッシュアップしているところです。」

言いながら、自然と手のひらに汗がにじむ。

篠宮部長の眼差しは柔らかいのに、奥に隠された鋭さを感じた。

彼女はただの上司ではない。社長の同期、そして同じように認められた人。

その人に見られている、試されている——そう思うだけで、胸が強く締めつけられた。
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