社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「何があったのか、教えてくれ。」

低く優しい声が耳元に落ちる。

その響きが胸の奥まで届いて、涙が止まらなかった。

「篠宮部長に……私の方が直哉さんのことを知っているんだからって、言われて。」

震える声で吐き出した途端、直哉さんの眉が動いた。

「澄玲が?」

その名前を口にする彼の声に、胸がちくりと痛む。

これじゃあ、私はただ弱い人間だ。

「私が一番知っているって言い返したんだけど……どうしても嫉妬が拭いきれなくて。」

吐き出すほどに、自分の小ささが突きつけられる。

それでも――この人にだけは、取り繕いたくなかった。

すると直哉さんは、不意に私の唇を奪った。

「んん……」

強く、情熱的なキス。

ここが会社だということさえ、一瞬で忘れてしまう。
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