社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「澄玲、話がある。」

直哉さんは私の隣に腰を下ろした。

その動作一つで、背筋が震える。

隣にいるだけで守られている気がした。

「君と付き合っていた事を、誰にも隠すわけじゃない。君と付き合ったことは、後悔していないから。」

真っ直ぐな声。

私は少しだけ安堵したが、心臓はまだ痛いほど打ち続けていた。

篠宮部長は反対側のソファーにゆったりと座った。

脚を組み、余裕を装ったその目が、次の瞬間、鋭く私に向けられる。

「そうでしょうね。」

冷ややかな声が、社長室の空気をさらに重くする。

「私と直哉は、上手く行っていたわ。直哉の両親が反対していなければ、結婚していたから。」

「えっ……」

耳を疑う言葉に、思考が止まった。

結婚――?

その未来が存在していたという事実が、胸に鋭い刃のように突き刺さる。

隣にいる直哉さんの温もりさえ、揺らいでしまいそうだった。
< 187 / 273 >

この作品をシェア

pagetop