社長、社内恋愛は禁止のはずですが
悔しさと哀しみが入り混じった表情のまま、私を真っ直ぐに見つめる。

「それが直哉の答えなのね。」

「ああ。」

直哉さんの答えは揺るがなかった。

「ごめんなさいね、水城さん。」

最後にそう言い残すと、篠宮部長は静かに社長室を出て行った。

重く閉まった扉の音が、場に残る余韻を強調する。

私は直哉さんの胸に顔を埋め、やっと訪れた安堵に深く息を吐いた。

「ありがとう、直哉さん。」

「いいんだ。困っている事があったら、俺に言って。」

その穏やかな声に、胸が温かくなる。

私はうんと頷き、立ち上がった。

「じゃあ、私は仕事に戻ります。」

「――ああ。頑張って。」

直哉さんの笑顔に力をもらいながら、社長室を後にした。

もっと強くならなきゃ。

そう心の中で繰り返しながら、足取りを早める。
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