社長、社内恋愛は禁止のはずですが
店員さんが奥から velvet の布に包まれた箱を持って来た。

そっと開かれた瞬間、眩しいほどの光を放つ時計が現れる。

シルバーのブレスに、ネイビーの文字盤。

シンプルで上品なのに、圧倒的な存在感があった。

「こちらがロレックスの“デイトジャスト”です。ビジネスにも普段使いにも適しています。」

私は思わず息を呑んだ。これなら直哉さんに相応しい……

そう思ったのも束の間、値札を見た瞬間、心臓が止まりそうになった。

「ひゃ、120万……!」声が裏返ってしまう。

私の給料がまるごと何ヶ月も飛んでいく金額。

夢に描いていた“恋人に時計を贈る”という想いと、現実の差にクラクラする。

それでも目は時計から離れなかった。

店員さんはにこやかに言う。

「一生ものですから。大切な方への贈り物に選ばれる方、多いですよ。」

私は唇を噛んだ。手が震える。……私に買えるの? でも直哉さんに贈りたい。
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