社長、社内恋愛は禁止のはずですが
そう言って、直哉さんはわざわざ今つけているロレックスを外し、贈った時計を自分の腕にはめた。

ネイビーの文字盤がシャツに映えて、驚くほど似合っている。

胸がじんと熱くなった。

「……ありがとう、遥香。」

けれど直哉さんはそこで終わらなかった。

腕をかざして眺めたあと、何かを思いついたように私を見た。

「これ、買ったお店って近く?」

「は、はい。」

急に背筋が緊張する。

「ちょっと案内してくれる?」

「ええっ⁉」

思わず声が裏返った。

まさか、御曹司を連れて再びあのお店に行くことになるなんて――心臓が破裂しそうだった。

お店に入ると、先ほどの店員さんがすぐに気づき、柔らかい笑みを浮かべながら近づいてきた。

「これはお早いお戻りで。」

「はあ……」

私は気まずそうに相槌を打った。

横を見ると、直哉さんは余裕の笑みを浮かべている。
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