社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「僕が彼女を連れてくるのを、想定してたんでしょ。」

「密かに。」

店員さんは目を細め、したり顔だ。

「ど、どういうことですか?」

私は恐る恐る尋ねた。

すると店員さんはショーケースを開け、今度は小ぶりの時計を取り出した。

「実はこのデイトジャスト、女性用のサイズもありまして。ご一緒にペアでお使いいただく方が多いんです。」

「うひゃああ!」

思わず変な声が出てしまった。

直哉さんは、そんな私を見て楽しそうに肩を揺らして笑う。

「なるほど、そういうことか。」

そして私の方を見て、にっこりと囁いた。

「遥香。せっかくだから、俺達もペアにしないか?」

店内の照明がキラリと時計に反射して、胸の鼓動まで輝いてしまいそうだった。
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