社長、社内恋愛は禁止のはずですが
結局、直哉さんは迷うことなく、ピンクフェイスの小ぶりな女性用デイトジャストを即決で購入してしまった。

あまりのスピードに、私はただ呆然と見守るしかなかった。

「どう?お揃いの時計。」

会計を終えると直哉さんは、誇らしげな表情で私の手首を取り、その時計を丁寧に着けてくれた。

冷たい金属が肌に触れる瞬間、胸の奥まで熱くなる。

「恐れ入りました……」

思わず本音が漏れる。

「何、それ。」

直哉さんは声を立てて笑い、すごく嬉しそうだった。

確かによく見ると、私に贈られた方の時計の方が値段は高い。

商売上手だなぁ……と、心の中で小さく突っ込む。

でもそんなことどうでもいい。今、私達は確かに“お揃い”なんだ。

「明日はこの時計、着けて。」

「……うん。」

小さく頷くと、直哉さんの目がとても優しく細められた。

二人の時間を刻む、この同じ時を。

明日からは、ずっと一緒に感じていけるのだ。
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